煙が目にしみる

猫と老人の日記

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

And I Love Her(15)

「ハヌマくんも、もう来てるみたいですね」 フルモトは空き地に並んでいる車を見ながら言った。 軽自動車、トラック、バン、ジープ、さまざまな車が並ぶ中で、荷台にブルーシートをかぶせた軽トラックは間違いなく葉沼隆の車である。 葉沼は陶芸家で、ここか…

And I Love Her(14)

フルモトの運転する軽バンは町を出て、山道に入って行った。 本や雑誌を満載して、さらに大人二人が乗った軽自動車にとってはきつい上り坂が続く。狭くまがりくねった山道をノロノロと進む。下りの対抗車が来ないのが幸いである。この道での離合は、いくら軽…

And I Love Her(13)

表通りの商店街は人通りもなく、これ以上に寂れようがないというほどのシャッター商店街になっている。営業しているのは中古書店(なかふるしょてん)と、100円ショップ、ラーメン屋、郵便局ぐらいのもので、実に閑散としているのだ。商店街の共同駐車場…

And I Love Her(12)

翌日の午後、私は隣町にある古本書店(ふるもとしょてん)を尋ねた。 島崎洋司の妻、礼子の葬儀は自宅で執り行われるということだったが、私は島崎の自宅を知らないので、古本光輝(ふるもとみつてる)と一緒に行くことにしたのだった。 古本(ふるもと)の…