煙が目にしみる

猫と老人の日記

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

And I Love Her(8)

女の人は酔っているのか、それとも泣いているのかカウンターに突っ伏してしまい、店の中は沈黙と静寂に支配されつつありました。 マスターは、僕の存在を思い出してくれたのか、やっとこちらへやってきて「ご注文は?」と訊いてくれました。 「何か食べるも…

And I Love Her(7)

稚内の公演を終えて一度旭川に戻ったときのことでした。 「すごかったんですよ。あの子、おれの背中に爪を立てて、もう足をからめちゃって放してくれないんですから」 「ええ? フジモリ、おまえあの子とやっちゃったのか?」 「そうですよ。あの子なかなか…

And I Love Her(6)

ソーカーさんの遺体はマニックと共にカルカッタへ帰って行きました。 亡き父親の葬儀に出ることもなく、ジュニアはあとの公演を引き継いで、マジックショーを続けることになりました。 僕たちの移動も続きます。名寄から稚内までの道北の町々でショーを行い…

And I Love Her(5)

わざわざ自分たちの宿舎から僕を誘いに来てくれたのかと思ってオニールに訊いてみたのですが、彼らインド人スタッフの男性陣は宿舎替えをして、僕たち日本人スタッフと同じホテルに移ってきていたのでした。 彼らは、ホテルの厨房を借りて自分たちの食事を作…